『スローモーション』の作詞を手がけたのは来生えつこ、作曲は来生たかおという、当時ニューミュージック界屈指のヒットメーカー姉弟でした。前年に『夢の途中(セーラー服と機関銃)』でメガヒットを記録していた2人が提供したメロディは、アイドルの定石を覆す複雑なコード進行と繊細な起伏を持っています。
「出逢いは スローモーション」という象徴的なフレーズに代表される歌詞は、少女から大人の女性へと移行する一瞬の心の揺らぎを、映画のワンシーンのように切り取りました。声を張り上げずに息の成分を多く含ませて歌うウィスパーボイスに近い歌唱法は、当時16歳だった中森明菜の天性の表現力を余すところなく引き出しました。
商業的には、1982年5月1日のリリース直後に爆発的な初動を記録したわけではありませんでした。オリコンシングルチャートでの初登場は週間58位。しかし、音楽番組への出演を重ねるにつれてその完成度の高さが口コミで広がり、登場14週目に最高30位を記録。累計売上は約17.4万枚に達し、息の長いスマッシュヒットとなったのです。