PCやMac、さらにはAndroidプラットフォームと異なり、iPhoneにおけるサードパーティ製ブラウザは本質的に別物だ。デスクトップ版ChromeはGoogle独自の内製レンダリングエンジン「Blink」上で動作し、Chromeウェブストアで配布される複雑な拡張機能スクリプトを高速に処理する。対照的に、AppleはiOS環境において自社開発エンジン「WebKit」の利用をブラウザベンダーに義務付けてきた。
欧州連合(EU)のデジタル市場法(DMA)施行によって欧州圏内では代替エンジンへの道が開かれつつあるものの、日本を含む大半のグローバル市場では依然としてWebKit強制のiOS機能制限が続いている。App Store上のChromeは、実質的に「GoogleのUIスキンを被せたWebKitブラウザ」に過ぎない。GoogleがiOS版にChrome拡張機能を公式実装しない最大の理由は、WebKit上でChrome固有の拡張機能APIを完全互換で実行させることが技術的にも規約的にも困難を極めるためだ。
ブラウザの根幹エンジンを掌握されていない以上、勝手なスクリプト実行はセキュリティサンドボックスを破壊しかねない。Appleは端末のバッテリー駆動時間、メモリ消費、そして何よりユーザーのプライバシー保護を名目に、サードパーティ製エンジンや未審査の実行コードに対して極めて保守的なスタンスを崩していない。