リビングや寝室の壁紙(主に塩化ビニル樹脂クロス)に発生する黒カビ(クラドスポリウム属)は、空気中の胞子が壁表面の皮脂汚れや埃、結露を栄養源にして増殖し、素材のミクロな空隙へ菌糸を深く伸ばしていきます。これを除去する際に最もやってはならない行為が、メラミンスポンジや硬いブラシでゴシゴシと擦り洗いをすることです。
塩化ビニル層を傷つけることなく深層の色素を分解するには、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする塩素系漂白剤の酸化力を利用するのが化学的に最も合理的です。作業の手順は明確です:
まず、壁面全体の目立たない下部(巾木付近の数センチ四方)に綿棒で薬剤を微量塗布し、15分間放置してクロスの変色や脱色、柄の消失が起きないかを必ず事前検証します。問題がなければ、カビの発生箇所へ均一に塗布します。液だれを防ぐため、キッチンペーパーを貼り付けた上から塗布するペーパー湿布法を採用すると、浸透効率は数倍に跳ね上がります。
放置時間はカビの深さに応じて10分〜30分程度。時間が経過したら、水で固く絞ったマイクロファイバークロスで最低3回以上、薬剤が一切残らないよう念入りに清き拭きを行います。残留した次亜塩素酸塩はクロスの黄ばみや劣化を早めるため、中和を意識した丁寧な水拭きが欠かせません。