ボールペンの心臓部は、ペン先に収まる直径0.28mm, 1.0mmの超精密な超硬合金製ボールです。紙面を滑らせることでボールが回転し、内部から供給されるインクを転写する仕組みになっています。インク残量があるにもかかわらず書けなくなる場合、この機械的連動が阻害されています。
最も頻発するのがペン先の固まりです。油性インクは溶剤が揮発すると粘度が急上昇し、ボールとホルダーのわずかな隙間で接着剤のように固着します。キャップを外しっぱなしにしたり、ペン先を出したまま放置したりすると短時間でこの現象が発生します。
次に厄介な要因が空気の混入です。上向き(水平より高い角度)で筆記を続けたり、壁掛けのカレンダーへ立ったまま記入したりすると、重力に逆らってインクが後退し、ペン先から内部へ空気を吸い込んでしまいます。一度エアポケットが生じると、インクの表面張力と毛細管現象が途切れ、書けなくなります。
さらに見落とされがちなのが、紙の微細な繊維や手の皮脂、修正テープの削りカスなどの異物混入です。これらがボールの回転溝に挟まると、物理的に回転がロックされます。加えて、一般的なボールペンの使用推奨期限は製造から約2年, 3年であり、長期間放置されたインク自体の化学的変質もかすれの一因となります。