大胸筋矯正サポーターの話題が浮上するたび、タイムラインでは決まってひとつの神話的論争が巻き起こる。「このネタの元祖は『すごいよ!!マサルさん』ではなかったか?」という疑問だ。
結論から述べれば、この認識は明確な誤りである。元ネタは、PLUS headsが制作し2000年代にカルト的人気を博した脱力系CGアニメ『The World of GOLDEN EGGS』だ。作中に登場する筋肉質の高校生コンビ「ケビン&ポール」の会話において、上半身にブラジャーのようなものを身につけていたケビンが、ポールから「お前それブラジャーじゃねえかよ」と突っ込まれた際に放った絶叫――「ブラジャーじゃないよ、大胸筋矯正サポーターだよ!」が正真正銘の一次情報である。
それにもかかわらず、なぜ多くの人が『週刊少年ジャンプ』で連載されたうすた京介の伝説的ギャグ漫画『すごいよ!!マサルさん』と混同してしまうのか。要因は主人公・花中島マサルの奇怪なコスチュームにある。
花中島マサルは学生服の肩口に謎のプラスチック製リングをぶら下げており、作中ではそれを「チャームポイント」と呼称していた。不条理ギャグの文脈、筋肉や体を張った珍妙な装具、そして1990年代末から2000年代初頭という近い時代背景。人間の記憶は時間の経過とともに都合よく圧縮される。ネット掲示板の黎明期において、うすた京介特有の不条理な言語センスと、ゴールデンエッグスのテンポの速い掛け合いが混ざり合い、「マサルさんがブラジャーを大胸筋矯正サポーターと言い張っていた」という偽史が自然発生的に定着してしまったのだ。