7歳を超えたシニア期、あるいは10歳以上のハイシニア期に入ると、1日の消費カロリーは成犬期と比べて15%から20%程度減少します。運動量が減り、寝ている時間が増えた結果として食事量が落ちる現象自体は、加齢に伴う自然な生理的変化の一環です。
しかし、急激な食欲不振の裏には、目に見えない病変が隠れているケースが多々あります。老犬の拒食で最も頻度が高いのは「重度の歯周病」です。歯石に覆われた歯根部が炎症を起こし、噛むたびに激痛が走るため、空腹であっても皿の前で後ずさりしてしまいます。また、加齢に伴い機能低下しやすい腎臓病や肝臓病、あるいは高脂肪食の過剰摂取によって誘発される膵炎(すいえん)も、強い吐き気や食欲不振の原因となります。
内臓に負担をかけず効率よく栄養を摂取させるため、脂質を抑えた消化の良い低脂肪ドッグフードへの切り替えが有効な選択肢となります。さらに、筋力の衰えた老犬にとって、床に直置きされた器から首を下げて食べる姿勢は首や腰に大きな負荷を与えます。食器台を導入して体高に合わせた高さに器を設置するだけでも、前傾姿勢の負担が軽減され、自発的な採食がスムーズになるケースが数多く報告されています。