寒天とゼラチンの決定的な分岐点は、その原材料と抽出プロセスにあります。寒天はテングサやオゴノリといった紅藻類を煮出して凍結乾燥させたものであり、主成分はアガロースやアガロペクチンといった食物繊維です。ニッポンドットコムの解説記事によれば、寒天は江戸時代に京都の旅館で「ところてん」が冬の寒さで凍結・乾燥した偶然から生まれた日本発祥の伝統食材です。炭水化物の一種である食物繊維の塊であるため、カロリーはほぼゼロに近く、水分を強力に抱え込んで強固なゲルネットワークを形成します。
対照的にゼラチンは、牛や豚の骨や皮に含まれる結合組織、すなわちコラーゲンを加熱抽出・精製した純度の高いタンパク質です。このタンパク質分子は熱によって一本鎖にほぐれ、冷えることで三重らせん構造を部分的に再形成しながら水分を抱え込みます。植物性の炭水化物ネットワークと、動物性のタンパク質ネットワークという出自の違いが、後の温度挙動や口溶けのすべてを支配しています。