アニメーションと既成ポップスのタイアップは、現在でこそ珍しくありませんが、1980年代末における『魔女の宅急便』と「ルージュの伝言」の融合は、画期的なメディアミックスの先駆けでした。それまでのアニメソングが作品のタイトルやキャラクター名を叫ぶ定型に縛られていたのに対し、普遍的なポップスを映画の文脈に持ち込む手法は、観客に対して「現実世界と地続きのリアルな青春ドラマ」を感じさせる効果をもたらしました。
この成功により、荒井由実時代の作品群は「親世代が青春時代に聴いたレコード」から「子どもたちがアニメを通じて自然に口ずさむマスターピース」へと世代交代を果たしました。松任谷由実名義のコンサートでも、「ルージュの伝言」が演奏されると会場のあらゆる世代が一斉にクラップを刻みます。過去の楽曲が新たな映像作品によって生命を吹き返され、アーティストのキャリア全体を底上げするサイクルの最も幸福な実例がここにあります。