ヤスは小夏と生まれてくる子供にまともな生活をさせるため、命を削る危険なスタントを引き受け続けます。そんな中、撮影中の大作時代劇『新選組』のクライマックスにおいて、監督と銀四郎はある途方もない見せ場を構想します。それは、高さ10メートルの特設セットから、斬られた志士が階段を転がり落ちる「階段落ち」でした。
あまりの危険性から、命の保証がないため誰もが引き受けるのを拒むこの大役に、ヤスが名乗りを上げます。銀四郎を映画の主役として輝かせるため、そして小夏と子供のために大金(危険手当)を残すため、ヤスは死を覚悟して階段の頂点に立ちます。
| 登場人物 | 演者 | 劇中の役割と運命 |
|---|---|---|
| 水原小夏 | 松坂慶子 | 銀四郎の子を身ごもり落ちぶれた元スター。ヤスの無償の愛を受け入れ、母として生きる覚悟を決める。 |
| 倉岡銀四郎 | 風間杜夫 | エゴイスティックな花形スター。保身のために小夏を手放すが、終盤ヤスの命懸けの忠誠に圧倒される。 |
| 村岡安次(ヤス) | 平田満 | 銀四郎を盲従する大部屋俳優。小夏を愛し守るため、死の危険が伴う39段の「階段落ち」に挑む。 |
撮影当日、小夏が産院で激痛に耐えながら出産を迎えるその瞬間、ヤスは銀四郎の太刀を浴び、血塗れになって急傾斜の階段を転がり落ちていきます。生と死のシンクロニシティ。全身打撲と骨折の痛みに耐え、血の海の中で立ち上がったヤスは、「銀ちゃん、かっこよかったかい?」と息絶え絶えに微笑みます。
映画の結末では、重傷を負いながらも一命を取り留めたヤスが、産院で小夏と我が子に対面。しかし、深作監督は映画のラストシーンに演劇的な「カーテンコール」の大仕掛けを導入し、映画が虚構であり、同時に人生そのものであるという鮮烈なメッセージを残して幕を閉じます。