手羽先をかじった際、骨の周囲や身の割れ目から滴る赤褐色の水分を、多くの消費者は「屠殺時の血抜き不足」や「完全な生焼け」と誤認しがちだ。しかし、一般社団法人日本食鳥協会の技術資料によると、この液体の正体は血液そのものではなく、骨髄液(こつずいえき)である。
食用として流通する若鶏(ブロイラー)は、生後約45日前後という極めて骨組織が未発達な段階で出荷される。成鶏に比べて骨の外殻が柔らかく多孔質であるため、油で揚げたりオーブンで加熱したりすると、骨内部の骨髄に含まれるヘモグロビン(血色素)が膨張し、骨の微細な孔や関節の継ぎ目から肉の組織へと染み出してくる。これが加熱によって赤褐色に固定され、赤い液体となって現れるメカニズムだ。
出荷前の食鳥処理工程では厳格な放血処理が施されているため、可食部の筋肉内に遊離した血液が大量に残るケースは構造上あり得ない。見た目のショッキングさに反して、骨髄液の浸出は若鶏の骨付き肉特有の極めて自然な物理現象に過ぎない。