この動画の根幹にある「ギコギコはしません」というフレーズは、元々小林製薬が長年放映してきた「糸ようじ」の地上波テレビCMにおける重要なお約束セリフです。歯間にフロスを無理にノコギリのようにスライドさせて歯茎を傷つける誤った使い方を戒め、「ゆっくりと前後に動かしながら挿入する」正しいブラッシング指導を伝えるための実用的なコピーでした。
このフレーズがインターネット上で独自の生命を持ち始めたのは、2000年代後半から2010年代にかけてのニコニコ動画黄金期です。小林製薬のCMはその独特なナレーションのリズム、明瞭な効果音、視覚的なわかりやすさから、MADクリエイターにとって格好のサンプリング素材となっていました。テレビから録画されたわずか15秒の映像が切り刻まれ、リズミカルな音楽に合わせてループ再生される文化が約20年近くにわたり地下で定着していたのです。今回の公式動画は、そうした非公式なネットミームの文脈を企業側が約15〜20年の時を経て真正面から受け止めた「公式からのアンサー」としての性格を帯びています。