十日町を彩る景観は、手つかずの自然ではなく、数百年におよぶ人間の営みが形づくった二次的自然です。急峻な斜面を切り開いた棚田は、保水機能を果たしながら土砂崩れを防いできました。しかし、過疎高齢化に伴う担い手不足は全国の里山同様、松代地域にとっても深刻な課題であり続けています。
こうした構造的危機に対し、十日町市は「まつだい棚田基金」を創設し、保全活動を支える持続可能な財源システムを構築してきました。都市部住民が里親として米作りに参加する「まつだい棚田バンク」との連動によって、景観の荒廃を食い止める現場主導の取り組みが現在も継続しています。旅人が息を呑む絶景の背景には、こうした農作業を泥まみれで支える地域住民やボランティアの汗が存在しています。
また、同地域は「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の舞台としても世界的に認知されています。「農とアートの融合」を掲げる松代エリアでは、草間彌生の巨大彫刻が佇む「まつだい『農舞台』」をはじめ、里山の中に現代美術が点在しています。秋のドライブでは、単に雲海を眺めるだけでなく、アート作品を通じて農村の記憶や風土の精神性に触れる知的な回遊体験が成立します。