蛇腹きゅうりの食感と調味液の浸透を左右するのは、包丁技術だけではありません。切る前の「板ずり」と切った後の「塩もみ」という2つの下処理が、最終的な完成度を左右します。
板ずりは、きゅうり1本に対して小さじ1程度の粗塩を振り、まな板の上で手のひらを使ってゴロゴロと転がす作業です。きゅうりの表面に無数に存在する鋭いイボを摩耗させると同時に、硬い表皮の細胞膜を塩の結晶でわずかに傷つけます。これにより、特有のエグみを含んだ余分な水分が排出され、鮮やかな濃緑色を引き出すことができます。
さらに蛇腹状にカットした後は、軽く塩を振って数分放置する塩もみを行います。浸透圧の作用で内部の水分が外へ押し出され、しんなりとした柔軟性が生まれます。この脱水プロセスを経て初めて、きゅうり内部の空洞に醤油、ごま油、酢といった調味液が毛細管現象のように急速に吸い込まれていきます。下処理を怠って水分を含んだままタレに漬けると、浸透が阻害されるばかりか、後から出る水分で味が著しく薄まってしまいます。