日本国内における『トムとジェリー』の受容において、TBS系列などで繰り返し再放送された旧地上波放送の存在を無視することはできません。八代駿氏のナレーションや肝付兼太氏、チコちゃんこと木村新代氏らの軽快な吹き替えによって親しまれた吹替版は、昭和から平成にかけて育った世代の共通記憶となっています。
旧地上波放送版の『逃げてきたライオン』では、ライオンの台詞回しに漂う情けなさと優しさが絶妙にローカライズされており、画面の暴力性を中和する見事な職人技が光っていました。「がおー」と吠えるのではなく、どこか申し訳なさそうに囁く声の演技は、キャラクターの愛嬌を何倍にも引き立てていました。
現在ではワーナー・ブラザース公式のデジタル配信やBlu-ray、あるいはYouTube公式チャンネルを通じて高画質なリマスター版を手軽に鑑賞できるようになりました。画質の向上によって、キャラクターたちの微細な表情の変化や、背景美術の手描きならではの温もりがより克明に伝わるようになり、再視聴した大人たちの間で新たな感動の声が広がっています。