帯結びの主役が袋帯そのものであるなら、その崩壊を阻止する最終防衛ラインは「帯締め」と「帯揚げ」である。これらを単なる装飾具と捉えていると、着崩れ防止の重要なチャンスを逃すことになる。
帯締めは、変わり文庫結びの下側を通り、帯板の上を密着しながら前へと回される。このとき、帯締めを通す位置を結び目の最下部ではなく、結び目の心臓部を下から持ち上げるように斜め上へ押し当てるのがプロの極意だ。前で結ぶ帯締めは、みぞおちから指2本分下の位置で息を吐いた瞬間に本結びを決める。これにより、帯締めが帯結びの「支柱」となり、歩行による縦揺れエネルギーをすべて吸収する免震構造が完成する。
一方の帯揚げは、帯枕の上部を包み込み、背中と帯の境界線を封鎖する蓋の役割を果たす。帯枕のガーゼをきつく締めた上で、帯揚げをふんわりと、しかし緩みなく胸元へ納めることで、上方向からの埃や摩擦の侵入を防ぎ、背中の補整と帯枕の一体感を盤石にする。装飾としての美しさと、構造保持具としての機能美。この双方が合致した瞬間に、24時間崩れない完璧な振袖姿が成立する。