この街が放つ独特の求心力を語る上で欠かせないのが、毎年秋に開催される道具屋筋まつりだ。アーケード全体が巨大な縁日のようになり、道具の掘り出し市や名物「巨大たこ焼き」の実演、包丁研ぎの実演販売などが行われる。普段は寡黙に作業台へ向かう職人たちが、一般の使い手と直に対話し、道具の正しい使い方を指南する場でもある。
デジタルコマースが普及し、調理器具が画面タップ一つで届く時代だからこそ、道具屋筋の店頭で交わされる対話の重みが際立つ。「この包丁は鋼の種類によって研ぎ方が違う」「この銅鍋は油のなじませ方で一生使える」。こうした生きた知恵の伝承が、単なるディスカウントストアとは異なる信頼関係を顧客との間に築いている。
道具屋筋振興組合を中心とする商人たちの危機感と柔軟性が、若い世代やインバウンドを拒絶せず、むしろ巻き込む原動力となった。古い看板を守りながら、最新のプロモーション手法を取り入れるしなやかさが、この150メートルの通りに凝縮されている。