2025年春から2026年にかけて、InstagramのリールやTikTok、YouTubeショートなどの動画プラットフォーム上で突如として急浮上したのが、ホチキスのようなフォルムをした小型裁縫器具の実演動画でした。布地を挟んで親指でカチカチと押し込むだけで、裏面に整ったチェーンステッチが次々と刻まれていく様子は、これまで裁縫セットを出して針に糸を通すことすら億劫だった多くのユーザーに衝撃を与えました。
動画が瞬く間に300万回再生を突破すると、全国のダイソー、セリア、キャンドゥなどの手芸用品売り場に生活者が殺到。特にダイソーの大型店舗では入荷当日に棚が空になる現象が観測され、フリマアプリでの転売が問題視されるほどの加熱ぶりを見せました。従来の大型ミシンが15,000円, 30,000円程度するのに対し、200円, 500円(税抜)という破格のプライスゾーンで「縫う」という基本機能が手に入るコストパフォーマンスの高さが、一人暮らしの学生や子育て世代の心を掴んだ要因です。
さらに、このブームは単に機械の物珍しさだけに依存していません。新学期の裾上げや急な冠婚葬祭のズボン丈合わせなど、「今日すぐにどうにかしたい」という切実なタイムリミットに直面した消費者が、手芸店に足を運ぶことなく100円ショップの店舗網で即座に課題解決できる環境が整ったことが、需要の爆発的連鎖を後押ししました。