20代からスターダムを駆け上がった俳優とは異なり、70代名脇役の多くは40代後半から50代にかけて全国的な知名度を獲得した「超・遅咲き」です。この過酷なキャリアパスこそが、彼らの演技に嘘のないリアリティを与えています。
代表的な例が小日向文世氏です。1976年にオンシアター自由劇場に入団し、劇団解散の1996年まで主力を務めながらも、映像の世界では長年「知る人ぞ知る存在」でした。借金を抱えながら事務所を転々とし、47歳で木村拓哉氏主演のメガヒットドラマ『HERO』(2001年)のメインキャストに抜擢されたことで爆発的なブレイクを果たしました。20年以上の下積みで培われた緻密な演技メソッドがあったからこそ、突如訪れたチャンスを確実に掴み取ることができたのです。
また、笹野高史氏も自由劇場で長年「ワンシーンの出番で観客を爆笑させる職人」として腕を磨き、山田洋次監督に見出されて映画界の常連となりました。華々しい主役街道ではなく、泥臭い端役を数百回と演じ重ねてきた経験が、人生の酸いも甘いも噛み分けた70代の表情筋に深く刻み込まれています。