2023年10月に連載10年の歴史に幕を閉じ、単行本全20巻をもって完結した原作本編。多くのファンが固唾をのんで見守った原作最終回でも、二人の唇が重なる瞬間は描かれませんでした。物語の終着点として山本崇一朗が選んだのは、キスよりも尊い「手つなぎシーン」と、西片の内面的な成熟でした。
最終巻で描かれた告白シーンは、西片からの不器用ながらも真っ直ぐな想いの吐露でした。これまで高木さんからの好意に対して逃げ腰だった西片が、自らの意志で彼女の手を握りしめます。読者が求めていたのは肉体的な接触の進展ではなく、二人の対等な関係性の成立でした。その意味で、あえて唇を重ねさせず、指先を絡め合わせる演出に留めた判断は、本作の美学の集大成と言えます。
劇的なドラマをあえて排し、日常の帰り道の延長線上で想いを成就させた結末。長年の読者からは「この二人らしい最高の幕引き」として受け止められ、直接的なキス描写がないことへの不満の声はほとんど見られませんでした。