1960年代からポスト・ミニマリズムの旗手として活動を続けてきたリチャード・タトルの作品は、紙、針金、合板、布切れといった極めて脆弱で素朴な素材から成り立っています。横幅わずか数センチメートルから数十センチメートルの小品が、天井高の巨大なギャラリーの広大な白壁にぽつりと配置されています。
遠くから眺めると、作品はほとんど壁面の染みや影のようにしか見えません。しかし、歩み寄るにつれて、紙のわずかな折れ目、水彩の淡いグラデーション、ワイヤーが落とす繊細な陰影が驚くべき解像度で迫ってきます。鑑賞者は自らの身体をかがめ、あるいは背伸びをし、視野角を「ななめ上」へと傾けることを強いられます。この身体の運動こそが、日常では意識されない空間のスケール感を鮮やかに呼び覚ますのです。