1992年、映画『ボディガード』の撮影現場で主題歌の選定は難航を極めていました。当初予定されていたジミー・ラフィンの「What Becomes of the Brokenhearted」が、映画『フライド・グリーン・トマト』で先に使用されてしまったためです。新たな候補曲を探すプレッシャーのなか、思わぬ打開策を提示したのが主演のケビン・コスナーでした。
コスナーは、1975年にリンダ・ロンシュタットがカバーしたバージョンの「I Will Always Love You」を持ち出し、プロデューサーのデイヴィッド・フォスターとホイットニー・ヒューストンに聴かせました。さらにコスナーは、誰もが予想しなかった大胆な演出を主張します。「最初のコーラスは楽器を一切入れず、アカペラで始めるべきだ」と強く主張したのです。
映画会社やレコード会社の重役たちは「ラジオで冒頭のアカペラなど流せない」と猛反対しました。しかしコスナーは一歩も引かず、ホイットニーの類まれな声の純度を観客へダイレクトに届ける構成を死守しました。その決断が、映画史および音楽史に残る屈指のオープニングを生み出すことになります。