写実的な名画に描かれる名馬と、絵本に出てくる愛らしい馬。両者の最大の違いは「情報量のコントロール」にあります。美術解剖学において、馬の頭部は頭蓋骨と下顎骨が大きな容積を占め、眼窩(目のくぼみ)から鼻先にかけて直線的な稜線が走っています。
初心者は、鼻腔のふくらみ、噛み合わせの筋肉(咬筋)、首筋の筋膜など、目についた凹凸をすべて線として紙の上にトレースしようとします。その結果、輪郭が凸凹になり、年齢を重ねすぎた馬や架空の怪獣のような歪みが生じてしまいます。手書きスケッチで成功するための鉄則は、下顎のエラと鼻先のラインだけを残し、中間の細かな凹凸を完全に消し去ることです。