インターネットの質問サイトやSNSで定期的に話題となるのが、「『五月の蝿』は単体で『うるさい』と読んでもいいのか」という疑問です。多くの人が混乱する最大の原因は、学校教育や一般的な文章で見かける形容詞「五月蝿い(うるさい)」の強い視覚的残像にあります。
漢字の並びだけを見れば、「五月」と「蝿」が使われているため、助詞の「の」が挿入されただけであっても「うるさい」の変形表記だと錯覚しがちです。しかし、現代の主要な国語辞典(広辞苑、大辞林、新明解国語辞典など)を引いても、「五月の蝿」という連語自体を独立した見出し語として「うるさい」と読ませる規定は存在しません。「五月蝿い」は3文字全体で1つの形容詞を成す熟字訓であり、間に助詞「の」を介在させた時点で、それは名詞句「五月(ごがつ)+の+蝿(はえ)」という独立した構造へと戻ります。