映画のロケーション誘致が地域経済を潤す一方で、秋吉台のようなデリケートな地質遺産での撮影には強烈な制約が伴う。秋吉台は文化財保護法に基づく「特別天然記念物」であり、石ひとつ動かすことや破損させることは法律で固く禁じられている。現場に入った美術チームや制作スタッフには、通常の現場とは次元の異なる配慮が求められた。
大型撮影機材やレールを敷設する際には、石灰岩に直接金属が触れないよう特製のゴムマットや緩衝材を隙間なく配置。足場を組む際もアンカーボルトの打設などは一切許されず、自立式の保護フレームが組まれた。さらに、数十人から数百人に及ぶエキストラやスタッフの動線には厳密な立ち入り制限ラインが引かれ、土壌の過度な踏み固めや植生の破壊を最小限に食い止めた。文化庁や地元自治体との綿密な事前協議と現場監視員の見守りのもとで進められたこの撮影プロセスは、貴重な天然記念物と映像産業が共存するための模範事例といえる。