『世界の中心で、愛をさけぶ』というタイトルは、もともとハーラン・エリスンの著名なSF短編集『世界の中心で愛を叫んだけもの』に由来します。小学館から2001年に単行本が発売された当初は静かな動きでしたが、全国の書店員の熱烈な推薦ポップや、柴咲コウが雑誌の書評に「泣きながら一気に読みました。私もこれからは、これ以上の恋愛をしていきたい」と寄稿したことを契機に大ブレイクを果たしました。
本作の根底にあるのは、白血病という不治の病に倒れる少女・廣瀬亜紀と、彼女を残して生き続けなければならない少年・松本朔太郎(サク)の逃れられない運命です。この古典的とも言える悲劇のプロットが2000年代初頭の日本社会に鮮烈に刺さった背景には、携帯電話やインターネットが普及し始めた過渡期において、音声吹き込み式の「カセットテープ」を用いたアナログなコミュニケーションが持つ詩的な重みが際立っていた点にあります。