現在、世界の水インフラ業界を根底から揺るがしているのが「永遠の化学物質」と呼ばれる有機フッ素化合物(PFAS:代表例としてPFOSおよびPFOA)への対応です。撥水剤や消火訓練剤として長年使われてきたこれらの物質は、自然界で極めて分解されにくく、発がん性や免疫機能低下、コレステロール値上昇などの健康リスクが指摘されています。
米国環境保護庁(EPA)は水道水中のPFAS規制値を4ppt(1兆分の4)という測定限界に近い水準で義務化し、全米の水道事業体に巨額の浄水設備投資を迫っています。日本国内でも米軍基地周辺や工業団地近隣の水源から相次いで高濃度のPFASが検出され、環境省と国土交通省が暫定目標値(PFOSとPFOAの合算で50ng/L)の見直しを進めています。
従来の急速ろ過や塩素消毒ではPFASを捕捉できません。除去には「粒状活性炭(GAC)吸着設備」や「逆浸透膜(RO膜)システム」などの高度浄水処理技術の導入が不可欠です。しかし、これらの設備導入と定期的なろ材交換には莫大なコストがかかります。安全な水を蛇口まで供給し続けるためのコストが跳ね上がる中、水道料金の据え置きと高精度浄水の両立という難題が、先進各国の自治体に重くのしかかっています。