1986年2月3日にリリースされた中森明菜の14枚目シングル『DESIRE -情熱-』は、当時の歌謡界に計り知れないインパクトを与えました。鈴木キサブローの作曲による鋭利なロックビートと、阿木燿子が紡ぎ出した自立した女性の激情を描く歌詞。それまでのアイドルが提示してきた清楚さや受動的な恋愛観を真っ向から覆す作品でした。
特筆すべきは、彼女自身がセルフプロデュースを主導したビジュアル戦略です。パリコレクションのモードを取り入れたモダンな着物衣装、直線的なボブウィッグ、そしてハイヒールではなく素足に近い足袋での激しいステップ。スタッフの反対を押し切って中森明菜が選び抜いたその前衛的なスタイルは、単なる歌唱披露ではなく、ひとつの完成されたシアトリカルなステージでした。
その圧倒的な完成度は批評家からも絶賛され、前年の『ミ・アモーレ』に続き、彼女は2年連続となる日本レコード大賞を受賞。名実ともに歌謡界の頂点へと上り詰めた瞬間でした。